第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
震える唇で腕がと呟くユーリ。
彼女が言いたいことはシャンクスも分かっていた。
咄嗟の事でユーリを守ることを優先したシャンクスは、利き腕を失った。
船内でその様子を見た仲間達が騒ぐ声が聞こえる。
それをシャンクスは、どこか他人事のように感じていた。
勿論痛みはある。
だが、絶望の表情を浮かべているユーリを見て、ある思いが彼の中で浮かんでいた。
「腕一本くらいどうでもねェよ。お前が無事でよかった」
人の良い笑みを顔に張り付けて、さも当然のように放たれた言葉。
勿論ユーリがそれで納得するはずもないし、安堵するわけでもない。
あぁ、そうだ…それでいい。
絶望の表情を変えないまま未だに涙を流し続けるユーリを見て、シャンクスは満足気味に歪んだ笑みを浮かべる。
そして片腕で抱いていた彼女を引き寄せ、涙で濡れる頬へと舌を這わせた。
…お前はこれから、この腕と引き換えにおれに囚われ続けるだろう。
頬に這わせていた舌をその小さな唇へと寄せると、そのまま食らいついた。
「……っ」
当然ユーリはされるがままだ。
最早彼女の思考回路は完全に停止していた。
冷え切った口内を、シャンクスの熱い舌が好き勝手翻弄する。
小さなそこは、舌を少し差し込んだだけでいっぱいになるほど、幼いものだった。
そんなところにも欲情しているあたり、おれもどうかしているのだろう。
いや、そもそも初めて会ったあの日からどうかしていたか。
シャンクスは笑いを押し殺すと、何時の間にか意識を失っているユーリを抱え直し、今度こそ自分の船へと戻った。
ユーリの姿は完全にシャンクスに隠れていた為、二人が何をしていたのかを知る者は、誰もいなかった。