第3章 後編 王の願い 少女の想い
「あぁーあれじゃないですか?遊女?売春婦?性欲処理的な?」
自分で言ってて虚しくなってきたが、目の前の彼があんまりにも考え込むから適当にそう答えてしまった。
「そうか?お頭は別に女には困ってないと思うが」
「…あ、はい、…そうですよねー」
いやそれは私も何となく察してるよ。
頼むからこれ以上この話題は止めてくれ。
私が一番混乱しているのだから。
「あ…気を悪くしたか?無粋なこと聞いて悪かったな」
ユーリの乾いた笑みを見て何を思ったのか、コックは自ら話を打ち止めてくれた。
なんか変な誤解をしてそうだが、もうこれ以上突っ込むのは止めよう。
ユーリは厨房に戻っていくコックの姿を見ながら、そっとため息を吐いたのだった。
「ユーリ、こんなところにいたのか」
あの後コックが作ってくれたデザートを食べていると、戦いが終わったのかシャンクスがやってきた。
「いや、戦う必要がないなら、最早私のすることは食べることしか思いつかなくて」
自分で言ってて何言ってんだこいつと自問自答したが、デザートを食べる手は止めない。
戦闘に参加したいわけではないが、暇なのもそれはそれで問題だ。
いっその事、船の食料を食い尽くしてやろうかとユーリが思っていると、不意に笑い声が聞こえてきた。
視線を向ければシャンクスが声を上げて笑っており、ユーリが怪訝な表情をしていると隣に座ってきた。
「流石、おれに戦いを挑んで来ただけはあるな」
ユーリの髪を撫でながらそう言った彼。
恐らく彼は、戦いの最中に呑気にデザート食ってるこの女の度胸はすげぇとでも言いたいのだろう。
だが、そもそもユーリ一人でマリンフォードに乗り込んだ時点で、色々突っ込むべき点がある。
ユーリをその辺の女性と同じ基準で図ろうとしても、それは無理だろう。
彼女の実力も、精神力も、並外れたものなのだから。