第3章 後編 王の願い 少女の想い
「お、どうしたんだ?もう戦いは終わったのか?」
ユーリが向かったのは食堂だった。
やることもないし、かと言って彼女に部屋が与えられてるわけでもないので、行く場所など限られている。
そもそもシャンクスが部屋の数が足りないとかほざいて、ごり押しでユーリをシャンクスと同室にしたのだ。
そうなればどうなるか察していたユーリは当然異議を申し立てたが、案の定彼女の意見は全スルーだ。
「多分そろそろ終わるかと…」
ユーリが適当に座ると飲み物を持ってきてくれたコックさん。
ユーリはお礼を言うと、甘いココアに口を付けた。
「しかしあのお頭と一時とは言え、互角に戦うとは…ユーリちゃんは凄いな」
「ハハ…あれは互角だったんだろうか…」
どう見ても一方的にボコられたような気もするが。
ユーリは意識を失ってからの出来事を知らないので、そう思っても仕方ないだろう。
しかしクルー達は、あの豹変したユーリの動きを見ていた。
だから彼女の実力に一目置いているのだ。
もちろん、ユーリが意識を失う前の動きも悪いものでなかったが。
「で、ユーリちゃんはお頭の女なのか?」
ユーリがシャンクスとの戦闘を思い返していると、何とも際どい質問をされた。
思わずむせたユーリは、零しそうになったココアを慌ててテーブルに置いた。
「ち、違いますよ」
「え?違うの?同じ部屋にいるのに?」
「そ、それは…」
いや確かにそう言われれば何も言い返せないが、シャンクスから好意的な言葉を貰ったことなど一度もない。
恥を忍んで聞いたにも関わらずだ。
「お頭がこの船に女を乗せるのも、部屋に連れ込むのも、たぶんあんたが始めてたぞ?」
「へ、へぇー」
納得できないと言うような表情で彼は訴えてくるが、ユーリだってシャンクスが何を考えているか教えて欲しいくらいだ。
空返事をするユーリに、コックはまだ何かを考え込んでいた。