第3章 後編 王の願い 少女の想い
結局あの後、二人が部屋を出てきたのは次の日の昼過ぎだった。
空腹と疲労を訴えるユーリを食堂に連れて行ってやると、コックに後は任せた。
「お、お頭に左腕が!?」
当然食堂には何人ものクルー達がいた。
ユーリの存在も気になったが、シャンクスの左腕の存在の方が衝撃が強かったのか。
あっという間にクルー達に囲まれて、何やら説明しているシャンクス。
ユーリはそんなことは気にせず席に着くと、大人しくご飯を待っていた。
「頭を説得できたのか?良かったな」
するとベンが近づいてきて、少し驚いているようにシャンクスを見ていた。
シャンクスが治療を拒否していた理由を察していたベンは、一体どういう心境の変化だと疑いの眼差しを向ける。
しかし考えたところで彼の本心が分かる者などいない。
一番付き合いの長いベンでさえ、彼の考えてることが分からないことが多々あるのだ。
「気が変わったらしいですよ」
ユーリは運ばれてきたオムライスに礼を述べると、せっせと口に運ぶ。
シャンクスの話に耳を傾ければ、ユーリが仲間になった旨を皆に伝えていた。
「仲間、ねぇ…」
何か言いたげにベンがぼやいたが、それ以上突っ込むのは止めた。
この船に女を乗せるのは、初めてだ。
当然クルー達は色めき立つが、シャンクスに手を出すなと釘を刺される。
ユーリの実力は、あの無人島でほとんどのクルー達が知ってるはずだ。
わざわざ釘を刺さなくても、この船で彼女より強い奴なんて、下手をすればシャンクス以外にいないかもしれない。
過保護というか独占欲が強いというか。
ベンは付き合ってられないとばかりに、ユーリと幾つか言葉を交わすとその場を去っていった。