第3章 後編 王の願い 少女の想い
ゆっくりと意識を浮上させる。
薄暗い部屋の中で、暫しぼんやりと視線を彷徨わせた。
すると背後から抱きつくように回された腕に気づく。
ユーリは先ほどまでの出来事を思い出し、軽く息を呑んだ。
身体の至る所に違和感と微かな痛み、そして怠さを感じる。
ユーリは軽く深呼吸をすると、再生の力を発動させた。
この力は他人には一度使えば次に使えるまで回復の大きさによって日数制限があるが、能力者本人には無制限に使える。
それこそ、心臓や頭をぶち抜かれ即死しない限りある意味不死身だ。
しかし、こんなことで能力を使うはめになるとは…
ユーリはなんともいたたまれない気持ちになり、ふと回されていたシャンクスの左手に視線を向ける。
そっと触れてみると、ほのかに暖かさを感じ、漸く重い罪悪感から逃れられたと安堵の息を漏らす。
すると、シャンクスの指先に触れていた手が不意に掴まれる。
驚いて声を上げる前に肩を掴まれ、身体を反転させられた。
「い、何時から起きてたんですか」
シャンクスと目が合うと、軽く顔を引きつらせながら視線を彷徨わせるユーリ。
「別におれは寝てなかったぞ?おまえが意味深におれの手に触れてくるもんだから気になってな」
掴んでいたユーリの手を離すと、身体を起こしたシャンクス。
そのままユーリに覆いかぶさると、その視線をユーリの身体に向ける。
そう言えばユーリはシーツを身に纏っているだけで、服を着ていない。
慌てて身体を隠すようにシーツを掴むが、それはシャンクスの手によって邪魔された。
「おまえ、能力使ったのか?」
あれだけ情事の跡を付けたにも関わらず、ユーリの身体はまるで何事もなかったように綺麗になっていた。
それを面白くなさそうにシャンクスは見ている。
ユーリが肯定の言葉を発すると、舌打ちでもしそうな勢いだ。