第3章 後編 王の願い 少女の想い
ユーリの言葉に一瞬考える素振りを見せた彼。
そして酒を一口煽ると、口元に笑みを浮かべて話し出した。
「おまえと剣を交えて、気が変わった。飼い殺すのが惜しくなってな」
「……か、飼い殺す?」
シャンクスの言葉にユーリは口元を引きつらせた。
一体私は、彼の中でどういう位置づけなのだろうか。
一番最悪なのが性奴隷だが、そうするだけの魅力が私にあるとは思えないし、彼なら女に困ることもないはずだ。
じゃぁなんだ?ただの嫌がらせか?左腕を犠牲にされたことに対する?
いや、そういえばその件は怒ってないんだったな。
え、まじで何なんだ。
「すげぇ百面相してるぞ。何か言いたいことがあるなら言えばいいだろ」
「…え…じゃぁ…」
ユーリは回らない頭をフル回転させ、シャンクスが何を考えてるのか予想した。
そして辿り着いたある可能性。
勘違いも甚だしい考えかもしれないが、咄嗟に聞きたいことがそれ以上思いつかなかった。
「まさかとは思いますが、私のことが好きなんですか?」
「さぁ、それはどうだろうな」
「……そうですか」
なんだこれ。
恥を忍んで聞いたのに、この不完全燃焼は。
じゃぁ今までの私に対する仕打ちは何なのか教えてくれよ。
ユーリが怪訝な表情でシャンクスを見ると、彼は終始笑みを浮かべていた。
もしかしておちょくって弄ばれてるのか?
もう駄目だ、彼が何を考えてるかまるで分らない。
よって、私はもう気にしないことにしよう。
ユーリはそう結論付けると、ソファーに深く座り直しため息をついた。
「もう質問は終わりか?」
「そうですね」
「じゃぁ今後の話だが…」
何事もなかったように話し出すシャンクス。
ユーリは気にしたら負けだと思い彼の話に耳を傾けた。
どうやらユーリの私物を買うために、どこか島によってくれるらしい。
確かにこっちに来てから何も持ってないので、それは正直ありがたかった。
金の心配は、取り合えず気にしないでおこう。
これから適当に賞金首でも狩って、資金を手に入れれば問題ない。
後は、船の案内は後日してくれることになった。
この船のコックの腕は一流のようで、ユーリは密かに楽しみにしていた。