第2章 中編 古代都市シャンドラ
赤い結晶が空中に舞い上がる。
ユーリは暫くその場から動けなかった。
ポーネグリフが音をたてて地面に落ちる。
廃墟と化したシャンドラの中心で、彼女はただただ茫然とシャンクスがいた場所を見つめていた。
ーーー私ハ、シャンクスヲ死なせた?
ユーリの身体から電気のようなものが走る。
ーーー私ハまだ一度モ、アイシテイルト伝エテ……ナイ
ゆっくりと立ち上がったユーリ。
脳内で、けたたましい警告音が鳴り響いた。
視界が赤く染まる。
遥か上空には、騒ぎを聞きつけたのか敵兵の軍隊が見える。
下手をすれば、20カ国全ての兵が集まってるのかもしれない。
「ユーリ、取り合えずルフィ達はここから避難させたわよ」
「あー駄目だこれは、完全にイカレテやがる」
ユーリの元へ舞い落りたポセイドンとプルトン。
制御不能となったユーリの対処を悩んでいたが、彼女はまだ正気を保っていた。
「記録を…ポーネグリフを…シャンドラを…残して」
「え?」
「Dの一族は…また蘇る。その時こそ、彼の望みを叶える」
「何となく言いたいこと分かったが、おまえはどうするんだ?」
「私は、このポーネグリフを最後まで守る。シャンドラには神や古代兵器の情報が多くある。それらを彼らには渡したくない」
「うん。それで?」
「彼らを道連れにして、シャンドラごと沈める」
「……おまえは、それでいいのか?」
「うん。……後は頼んだ」
ユーリはそれだけ言うと、それ以降言葉を発することなかった。
彼女が見据えているのは、目の前の敵兵のみ。
「…行くわよ」
「…あ、あぁ…そうだな」
ポセイドンとプルトンはその場を離れる。
このままここにいて巻き込まれたら、ユーリの最後の願いを叶えてやることができない。
彼女達はこれから、遠い未来、ここへ辿り着く者の為に情報を残す必要があった。