第2章 中編 古代都市シャンドラ
ユーリはシャンクスからポーネグリフを預かると、今後の話をした。
まずユーリが囮になって、機械たちの攻撃を極限まで一点に集中させる。
更に言うなら、機械の近くに浮いている戦艦。
恐らく化学兵器を積んでいる可能性が高い。
ユーリが戦艦に攻撃を仕掛ければ、何かしら攻撃を仕掛けてくるだろう。
その攻撃は、化学兵器であることが望ましい。
だからユーリは、ギリギリまで相手を追い詰める必要があった。
そして全ての攻撃がユーリへと向けられたその時、ポセイドンに結界を張らせる。
これで、結界の中は膨大なエネルギーの塊となる。
そのエネルギーをこの石で取り込むのだ。
ユーリの話を黙って聞いていたシャンクス。
ユーリを抱え込んでいる手に、力が込められた。
「私自身にも、直前に結界を張ってもらいます。シャンクスにこの石を渡さないといけませんから」
ユーリは死ぬつもりはない。
だけど、言い表せない虚無感が、彼を襲った。
「……すまない」
ユーリを守ると言っておきながら、犠牲にしようとした挙句、最後まで彼女の助けを借りることになる。
器としての素質が彼しかいないなら、ユーリの代わりに囮になることはできない。
一度きりのこの作戦。
失敗は許されないんだ。
シャンクスだって好きでユーリを犠牲にしようとしているわけではない。
出来ることなら何もかも投げ出して、二人でどこか遠くへ逃げたかった。
叶うことのないその夢物語に、彼の心は深い闇が生まれつつあった。
「違いますよシャンクス。こういう時は謝罪ではなく、感謝の言葉を述べるんです。世界を、救うんですよね?」
そう笑ったユーリ。
本当に彼女は、人間らしくなった。
争いのない世界。望みはただそれだけだった。
「…あぁ、そうだな。…ありがとう、ユーリ」
彼もまた笑った。
その笑みに違和感があることに気づけるほど、ユーリはまだ人の感情を理解できていなかった。