第2章 中編 古代都市シャンドラ
「正直、上手く行くとは限らない。だからおまえも、国民と一緒に逃げて欲しい」
シャンクスは一人でここに残るつもりだった。
こんな時こそ私たちを頼ればいいものを。
彼の言葉に、ユーリは眉をひそめた。
「この国が無人だと分かると、標的が変わる可能性があります。だから私とプルトンも残り、彼らを迎え撃ちます。まるで大勢の人がいるように振舞えば、逃げた人まで被害はいかないでしょう」
「…しかし…」
「待ってます。私はシャンクスを信じて待ってますから、あなたも私を信じてくれませんか?」
視線を合わせ真っすぐと伝えられたその言葉。
はっきりとした口調は、有無を言わせない強さがあった。
「…まいったな…そう言われてしまうと、断れないだろ」
シャンクスは苦笑した。
ユーリのことは誰よりも信じている。
だからこそ彼女には、この国を託したかった。
「おまえには敵わないな」
ユーリがいると不安も迷いもなくなる。
あれだけ迷っていたのに、彼の心はすでに決まっていた。
「おれが戻るまで、この国を頼む」
シャンクスが告げた言葉に、彼女はしっかりと頷いた。
彼女と二人なら、きっとどんな困難でも乗り越えられる。
そんな錯覚にすら陥った。
「ユーリ」
暫し無言で見つめ合っていたが、徐にシャンクスが彼女を呼んだ。
ユーリの表情は相変わらず無表情だが、僅かに首を傾げて彼の言葉を待つ。
そんな彼女を愛しそうに彼は見ていた。