第2章 中編 古代都市シャンドラ
「シャンクス」
静寂に包まれた空間で、彼女の声が静かに響き渡る。
「大丈夫だよ」
ユーリは抱えられたまま彼の頭に抱きつき、そっと赤い髪を撫でた。
「国民を、一度この国から非難させましょう。プルトンに運ばせて、安全が確保されるまでポセイドンに守ってもらいます。そしてここで、私とシャンクス、プルトンの3人で彼らを迎え撃ちましょう。こちらからは攻撃を仕掛けません。あくまで被害は最小限に抑えられるよう、私たちも務めます。そして外道かもしれませんが、相手国の偉い方を掴まえて人質にしましょう。そうやって取引を繰り返せば、きっと何時かは終わりが来るはずです」
スラスラと述べられるユーリの言葉を、驚いた表情で彼は聞いていた。
「他国がシャンドラを目の敵にするのは、権力の集中と裕福な資源なのでしょう。ですからこの戦いが終われば、古代兵器である私たちは眠りにつきます。そして資源は、他国も持っているはずなので、そこは上手く取引をしてください」
一切の迷いもなく告げられたその提案。
自ら永遠の眠りに付こうとしているユーリ。
シャンクスの表情が厳しいものに変わった。
「おまえがいなくなる必要はないだろう?ユーリは兵器じゃなく、おれが愛したただの人間だ」
「…そうは言いますが」
「それに、おれにも考えがある」
ユーリは何か言いたげだったが、彼の言葉を待った。
「近々、神と盟約を交わす。言い方は悪いが、おれがこの世界のトップに君臨して、支配させてもらう」
「盟約?」
神との盟約。それは遥か昔に一度だけ聞いたことがあった。
盟約とは、世界を支配するルール。
選ばれた者は神が望むものを与えれば、いかなるルールをも作ることができるのだ。
当然リスクもあれば、必ず上手くいくものでもない。
過去数千年生きてきたが、神と盟約を交わすことの出来た人など見たことがなかった。
世界を支配するルールとは、下手をすれば神と同等かそれ以上の力を持つことになる。
ーーーまさか、命どころか魂すらも捨てようとしているのでしょうか
神が何を望んでくるのかは、直前まで分からない。
ただ何を望まれても、危険なかけには変わりなかった。