第2章 中編 古代都市シャンドラ
「おまえに関するデータも、盗まれてしまった」
数日前、数名の家臣たちがこの国を去った。
重要書類を持ち去った彼らをみすみす逃した責任は、こちらにもあるだろう。
だが、過ぎてしまったことを悔やんでも仕方ない。
今考えるべきは、これから起こるであろう争いのことについてだ。
シャンクスの脳内には、幾つもの戦略・選択・決断が浮かんでいた。
ロジャーがいなくても、家臣の中には当然相談できる人物はいる。
実際に、これから先のことを話してきたばかりだ。
その中で出された様々な意見に、答えはまだ見つかっていない。
シャンクスは、表には出さないものの、漠然とした不安と焦る気持ちがあった。
これから起こるであろう未来。
彼が選択を間違えれば、多くの死者が出るだろう。
全てが敵だった神との対立とは訳が違う。
この世界に住んでいる者との争いは、関係のない人まで被害が及ぶだろう。
ーーーなぁ、おれはどうすればいいんだ
言葉に出来ない心の叫び。
国王である彼が、迷いや不安を表に出すことは許されない。
不安に思う気持ちは、きっとこの国にいるほとんどの者が抱いている感情だ。
だから彼だけでも、気丈な立ち振る舞いをし、皆を安心させなければならない。
不安という、彼らしくない感情。
その彼が珍しく弱音を吐いた人物。
それが、ユーリだった。