第2章 中編 古代都市シャンドラ
全ての国を力でねじ伏せれるだけのものを、シャンドラは持っている。
しかしそうしたところで、本当に世界は1つになるのだろうか。
よく相談していたロジャーは、先月息を引き取り告別式が行われた。
遺体の入っていない棺桶を見て、いずれは自分もああなるのかと、どこか他人事のように思っていた。
悲しむ暇など、今の彼にはなかった。
「…ユーリ、ちょっとついてきてくれないか」
シャンクスが自室に戻ると、ユーリはベットに横になり本を読んでいた。
未だに片腕の彼女を支えながら起こしてやると、そのまま抱え込む。
「何処に行くんですか?」
ユーリを抱えたまま城外に出たシャンクスを、不思議そうに彼女は見ていた。
彼の表情は厳しく、言葉少なく足を進めていく。
そうして辿り着いた先は、神々が祀られている祭壇と大きな鐘のある場所だった。
昼間はそれなりに人で賑わっているが、今の時間帯は夕刻前。
ユーリ達以外に、人の気配はなかった。
丘の上に作られたその場所は、シャンドラを一望できる。
夕日に照らされたその光景は、とても綺麗だった。
「…これから先、他国との戦争は避けられねぇ」
暫く二人は無言でその景色を見ていたが、徐に彼が口を開いた。
まるで独り言のように呟く彼の言葉を、ユーリは静かに聞いていた。
「力を力でねじ伏せることはできる。だが、それが本当に正しいのかおれも分からなくなってきた」
以前のシャンクスなら争いごとを無くすためには、ある程度の力が必要だと思っていた。
だから古代兵器の存在を探していたのだ。
しかし実際に力を手に入れ、他国から敵視された今、果たしてそれを実行していいものか分からなくなっていたのだ。
敵国の兵士だけを一網打尽に出来るならまだいいが、多かれ少なかれ、関係のない国民にも被害がでるだろう。
いっその事、神様とやらがそこのところをどうにかしてくれればいいものを、期待するだけ無駄なようだった。
今の彼らは、裕福な生活は与えてくれるが、それ以外は傍観する立場にあるようだ。