第2章 中編 古代都市シャンドラ
咄嗟に思いついたのがシャンドラにある農家。
そこにいた牛の乳しぼりをしている老夫婦と、一度だけ話したことがある。
その時に得た知識を、ユーリは咄嗟に使ってしまった。
「……っく」
暫く呆けたような表情の彼だったが、案の序笑われた。
場面が場面なだけあって、笑いを堪えてるようだが、肩が小刻みに震えていた。
「…ねぇ、私は何をすればいいですか?」
どうやら自分のやったことは場違いだったようで、ユーリは居たたまれなくなり話題を逸らす。
そしてシャンクスはと言うと、笑い過ぎて涙が出てきた目元を拭い、ユーリの頭を優しく撫でてきた。
「おまえは何もしなくていい。変わらずそのままで、傍にいてくれればいいさ」
「…私もシャンクスに何かを伝えたいのですが」
シャンクスはユーリに色んなものを与えて、伝えてくれた。
だからユーリも、彼の為に何かをして、伝えたいと思った。
「おまえなりに、おれへの気持ちを探そうとしてくれてるんだろ?ゆっくりで構わないから、焦る必要はねぇぞ」
「…だって…」
ーーーだって、あなたに残された時間は、もう…
ユーリが言葉に詰まると、シャンクスは何かを察したのかそっと彼女を抱きしめた。
そしてそのまま横になると、彼女の不安を無くすためかトントンとあやすように背中を撫でる。
ユーリは何か言いたげに口を開くが、結局言葉が発せられることはなかった。
シャンクスも優しく撫でる動きはそのままだが、言葉を発することはなかった。
暫くの間、静かな時間が流れていく。
ユーリを見つめる彼の瞳はどこまでも優しい。
ここ最近ピリピリしていた彼とは大違いだった。
一体何があって機嫌がよくなったのか分からないが、彼が幸せそうだったので、深く追求はしなかった。
ーーー彼が幸せなら、それでいいか
ユーリは背中を撫でられる心地よさに目を細めると、そのまま瞳を閉じた。