第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
「珍しく考え事か?」
「…ん?まぁーそうだな」
シャンクスが物思いに耽っていると、ベンが何かを感じたのかシャンクスに近づいてきた。
「…頼むから、間違いだけは起こすなよ」
ベンが話しかけても、茫然とした表情でユーリを見ているシャンクス。
「何だよベン。お前までそんなこと言うのか?」
シャンクスはベンの言葉に盛大に笑っていたが、ベンの表情は微妙に厳しかった。
だが、それにシャンクスが気に留めた様子もない。
そんなシャンクスにベンはため息を吐くと、冗談だと言ってその場を離れた。
…あれは無意識か?…だとしたら厄介だな。
シャンクスがユーリを見ていたその瞳は、子供へ向けるものではなかった。
シャンクスにそんな趣味があるとは思えないが、頼むからおれの気苦労を増やさないで欲しい。
今まで自由奔放な彼に文句言わずについてきたが、流石に子供に手を出すなら転職先を考えるかもしれない。
…いや、考えすぎか。
ベンは己の考えを打ち消すと、仲間の元に戻って酒を飲んだ。
知能指数が高い彼がここまで悩むのも珍しい。
それほど、ユーリの存在は大きいものだった。
先ほどシャンクスがユーリを助けるために覇気を使ったのは知っている。
にも拘らず彼女は意識を失わず、シャンクスと共にここへ来た。
その違和感を、シャンクスと同様ベンも感じていた。
そしてシャンクスのあの様子。
ベンは再びため息を吐くと、珍しく考えることを放棄した。
視線を向ければ、子供二人仲良く話している姿と、それを静かに見ているシャンクス。
傍から見れば違和感のないその光景に、ベンだけは微妙な表情をしていたのだった。