第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
そしてその日の夜。
ユーリは流石に今の状況に違和感を感じ始めた。
取り合えず親がいないと言う設定で、暫くマキノさんの所で過ごせることができるようだが、問題はそこじゃない。
「…なぜだ。なぜ夢から覚めない」
未だに夢だと思っていたユーリは、夢の中で寝ようとしている状況に困惑していた。
だが、与えられたベットの上で悶々と考えていても、状況は一向に変わる気配はない。
おかしい。
最早その言葉しか出てこなかった。
「何だお前、まだ起きてたのか?」
そしてユーリが悩んでいると、ありえない人物が訪ねてきた。
「…んん?」
何故だ。何故シャンクスがここにいる。
突然の彼の登場に、ユーリは暫し理解が追い付かなった。
しかしそんなユーリの困惑に気づいていないのか、さも当然のようにユーリの座っているベットの隣に腰を掛けるシャンクス。
そして始まる世間話。
ユーリの思考は最早追い付かなかったが、辛うじて受け答えをしていた。
「…なぁ、おまえ、おれの船に来いよ」
「…へ?」
雑談の中にサラッと混ぜられた予想外の話。
突然言われたその言葉にユーリの思考は遂にフリーズした。
「どうせ行く宛てないんだろう?海賊は自由でいいぞー、冒険なんて楽しさしかないからな」
ユーリが困惑しているのをどう捉えたのか、海賊の良さをアピールし始めるシャンクス。
ちょっとまておい。シャンクスは海賊の良いところも悪いところも知ってるからルフィを連れて行かなかったんだよな?
にもかかわらずなぜ私を連れて行こうとする?
あれか、こいつなら神経図太そうだし死なねぇとか思っているのか?
それならば是非ルフィも一緒に連れて行ってくれ!!そしたら私も喜んでついて行くぞ!!
「いいですけど、ルフィも一緒にお願いします」
「ルフィも?何でだ?」
「…え」
さり気にした提案は、すんなり通るわけもなかった。
そして理由を聞かれても、邪な考えしか思いつかなかったので思わず言葉に詰まってしまった。