第1章 死人に口有り
「お願い! お願い、お願い、お願い、願ィイイ!!」
「うっせーんだよ! んな事より、さっさと成仏しやがれってんだコノヤロー!」
「依頼! 依頼なら良いでしょ!? 噂で聞いてるよ! 銀髪のヘンテコ侍が万事屋やってるって、聞いた事あるよ! ソレお兄さんの事でしょう!? ねえねえ、ちゃんと依頼料も払うからァアア!」
「ヘンテッ……人違いだ! 断然、テメーの人違いだ! 俺ァ万事屋なんてロクでもねー仕事してねーよ! ヘンテコでもねーよ!」
「あ、名刺発見」
「テメッ、返せゴラァ!」
お願いがダメならば依頼はどうだ、と少女は見当違いな事を言い始める。貶しながらもしつこく銀時に迫る彼女の発言を嘘で突き放そうとしたが、なんとも運悪く懐から落ちた名刺を手に取られてしまった。「万事屋銀ちゃん」とはっきり印字された紙切れを拾われてしまえば、元から通用していなかった嘘が完全に通用しなくなった。
「坂田銀時? じゃあ銀さんね! よろしく銀さん! さあ、早く依頼を聞いてちょうだいな!」
「人様をテメーの勝手に巻き込むんじゃねェエエ!!!」
そろそろ大人しく人の話を聞くだろうと予想していた少女だったが、筋金入りの幽霊嫌いは思うように彼女の存在を受け入れてくれなかった。それにムッとした少女は両頬を膨らませながら銀時を吊り目で睨む。
「むぅう、だったら…………ていっ!」
最終手段、とばかりに少女は銀時に襲いかかる。しかし姿形のはっきりしていた彼女の体は瞬時に透明になり、銀時の目の前から消えた。うおっ、と間抜けな声をあげた銀時は何事かと焦る。そして妙な寒気と、己の体内に誰かが入り込んだような感覚を覚えた。