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死人に口有り(銀魂:銀時夢)

第1章 死人に口有り


「ギャァアアアアアア!! こっち来んなバカヤロー!」

「待ってよ、お兄さん! ちょっとだけ話を聞いてよ!」

 それからはもう、銀時と幽霊少女の追いかけっこが始まった。お登勢や掃除道具の事などすっかり頭から抜け落ち、銀時は広い墓地を全速力で走り回る。追い着かれまいと必死になったが、銀時の努力は無駄となる。先ほどまでは走ったりスキップをしたりと、生きた人間と変わらない行動をしていたはずの少女は空を飛んで銀時に追い回す。幽霊を撒こうと複雑に墓地を尋常じゃないスピードで駆ける銀時だったが、尋常じゃないスピードで飛ぶ少女を中々離せない。少女も少女で話しかけ続ければ止まってくれるだろうと期待したが、一向に走る早さが緩まない銀時を見て痺れを切らす。今まで以上の速度で銀時との距離を一気に縮めれば、彼女は銀時の腰にしがみついた。冷やりとした体温に触れられて驚いた銀時はそのまま地面にうつ伏せで倒れ込む。

 今度は銀時が鼻を赤らめながら上半身を上げて体の向きを仰向けにした。そして尚も銀時にしがみついている幽霊の顔を右手で押しながら突き放そうとする。

「放せ、放しやがれ! だいたい何で真っ昼間からお化けが出てきやがんだ!? オメーらの活動時間にはまだ早ェだろうが! 本当に空気読めってんだ、クソアマッ!」

「お願い! お兄さん! 私、話がしたい人がいるの! 隣町の武田さんって人! でも幽霊だから話せないの! ねえねえ、代わりに話をしてよ! お願い!」

 やっと銀時を捕まえた少女は全身全霊で彼に頼み事をした。しかし幽霊と関わりたくもない銀時は案の定、彼女の願いを断る。

「誰がんな事すっかよ! 話たけりゃあ、霊媒師にでも頼みやがれ!」

「出来るんだったら、とっくにしてるよ! ダメだったの! 日本で一番腕の良い霊媒師さんに会いに行ったけど、全然ダメだった! 私の事見えてなかった! 七年待ってやっとお兄さんに出会えたの! 私を見てくれたのはお兄さんが初めてなの!」

 恋愛関係であればときめくような台詞を言われたが、銀時の幽霊恐怖症が作り上げた鋼鉄な心の壁には一切響かなかった。むしろ銀時からの抵抗は一層激しくなる一方である。それでも幽霊少女は諦める事なく銀時に頼み続けた。
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