第1章 死人に口有り
「迷子の迷子の子猫ちゃん、貴方のお家は何処ですか? お家を聞いても分からない。名前を聞いても分からない。にゃんにゃん、にゃにゃーん。にゃんにゃん、にゃにゃーん。泣いてばかりいる子猫ちゃん! 犬のー……」
周りを見渡した銀時が目にしたのはあっちへフラフラ、こっちへフラフラと動き回る人影。どうやら幼稚な歌を口ずさんでいるのは、徐々に近づいてくるその人物らしい。並ぶ墓石に隠れていた姿はやがて銀時達を通り過ぎ、歌声の正体は新八ほどの年齢をした少女だと言う事が分かった。クリーム色の生地に紺色の柄があしらわれた着物を身につけ、そのまま彼女は元気よく銀時達の周りを徘徊した。
お登勢は少女に気付いていないのか、はたまた気付いていながら無視をしているのか、明るい歌声を気にせず辰五郎に手を合わせて語りかける。
「アンタ、今日は珍しく銀時も一緒だよ。まあ、アタシが扱き使うために連れて来たんだけどね。でも安心しな。コイツがお供え物に手を付けないように、たらふく食わせておいたよ」
「どうっしてお腹が減るのかな? 喧嘩をする〜と減るのかな? 抱っこして、おんぶして減るのかな……」
安い焼き肉バイキングの話をし始めたお登勢を聞いてか、スキップをしながら戻って来た少女が曲を変える。道に落ちている石ころを避けながらまたフラフラと行ったり来たりを繰り返した。
「まあ食いモンの心配も、アタシらの心配もしなくて大丈夫だよ。相変わらず毎日毎日、飽きもせず馬鹿騒ぎしてかぶき町は賑やかさ。そういや時期的にクリスマスってーのも、もうすぐだよ。子供達のプレゼントも用意しなきゃあならないねぇ」
「あわてんぼうのサンタクロース! クーリスマス前ェエエにやってきた! 急いでリンリンリン! 急いでリンリンリン!」
明らかにお登勢の会話に反応している少女は、テンションも歌う曲を変えるたびに上げた。声もだんだんと大きくなり、見た目よりも幼い行動を続ける彼女は更に早足でお登勢と銀時の周りをグルグルと回る。