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死人に口有り(銀魂:銀時夢)

第1章 死人に口有り


「私の所為で貴方の人生が台無しになってしまって、ごめんなさい。今年で貴方は24歳になれたはずなのに、若すぎる年齢で貴方の時を止めてしまった。本当に、ごめんなさいっ。でも私が平気な顔して生きていない事を解って欲しい」

 聞こえて来た切ない語りは、銀時に何かを聡した。

「……もしかして、あの女が謝ってる相手って」

「私によ」

「じゃあ、お前」

「うん、あの人に轢き殺されたんだ」

 少女曰く、事故は七年前に起こったそうだ。話は単純で、バイト帰りだった十七歳の少女は飲酒運転をしていた女に命を奪われたのだ。当時は攘夷戦争が終戦を迎えて間もなく、天人の技術で導入された車は多かったが、交通整備は非常に雑だった。道路交通法もまだまだ発展中であり、事故が多発していたのが現実だ。今でも事故は起こるが、当時ほど悲惨ではない。当時の数ある不慮の事故の一つで失われてしまった命。それが今、銀時に取り憑いている少女だ。

 ついでとばかりに説明は続き、加害者の当時の年齢は三十歳である事、加害者が事故で両目を失った事、少女が死んだ後も加害者を見守っていた事、そして七年間も少女と武田の仲人をしてくれる人物を探していた事を銀時に教えた。そうした話を聞いている間も、銀時は祈りながら泣き崩れる女を見据える。その姿はとても七年前の事故に悲しんでいる人物には見えなかった。まるで昨日起こった事故に嘆いているようで痛々しい。三十七歳になった彼女が、未だに事故の事で悔いている様がありありと感じ取れる。墓前に零される謝罪も、終わる様子がない。

「貴方の人生を短くしてごめんなさいっ。普通の人が味わえる幸せを奪ってごめんなさいっ。でも私は一生、貴方を心の中に留めておくから。貴方の家族が幸せになる為に貴方を忘れてしまっても、私だけは貴方の事を忘れないから」

 憑依されているからか、女の言葉に反応して溢れる少女の感情が銀時にも伝わった。それは一言では説明出来ないほど複雑な気持ちで、怒りなのか悲しみなのか、はたまた愛おしさなのかも分からない。ただ言えるのは、少女の女に対する想いが純粋である事。
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