第14章 告白と小さなお別れ
(国語の教師でも目指しているのだろうか?)
百聞は一見にしかず。
他人の言葉よりも、自分の目で見た体験の方が、事実としてより信ぴょう性を持つ。
小学生でも分かるような初歩的なことわざだ。
そう思いながら、私は「うん」と頷く。
「俺はそういう言葉を大事にすべきだと思っている。お前は違うのか?」
(質問を投げかけられると、より先生味が増していくな……学生服だけど)
そんな風に思いながらも、先生の質問に答える。
「……違くない」
「なら、答えは簡単だろ」
「?」
「嘘には最も程遠い馬鹿正直な姿より、敵の妄言を信じる馬鹿がどこにいる?っていう話だ」
ドォーンッ!
「!」
その承太郎の信じる心の言葉は、由来の心に十分響いた。
承太郎は由来のことをとっくに認めていた。
仲間としてだけでなく、さらには、生粋のお人好しとして。
仲間だけでなく、赤の他人でさえも助けるところ散々見せられてきた。
石段の上から始まった青春とは程遠くサスペンスに近いシーンばかり。
しかしその出会いも、よく考えれば彼女のそんな性格から始まった奇妙な物語だ。
(コイツ。まだそんなことウジウジ考えてやがったのか…)
インドでのウォンテッドという気味の悪いスタンドと戦って以来、由来が周りを気にしていることは知っていた。
チームとは、互いへの信頼がある上で初めて成り立つ。
1人でも内通者と思われる疑わしい人物がいれば、それを咎める者と庇うもので衝突し合い、組織としての機能や秩序を乱す恐れがある。
由来がそれを恐れていることを、その場にいた承太郎は分かっていた。
「誰もてめーがスパイなんざ微塵も思ってねえ。てめーはいちいち気難しく考え過ぎだ。それともお前は、お前を信じる俺たちを信じられねえと?」
承太郎は首を傾げて試すようなことを聞くと、由来は首を横に降る。
すると急に穏やかな表情を作り、自分の心臓あたりに手を添える。
「これは、アナタに救われた命だ。だから信じるさ。承太郎も、その気持ちも」
「!」
場の空気がガラリと変わり、承太郎は不意打ちを食らったような気持ちになる。
その左目はいつもとは違い、感謝の意の他に、年相応の少女のような幼さと純粋さがあった。