第14章 告白と小さなお別れ
「……」
承太郎はそんな目を向けられて、思わず視線を左に逸らす。
「?」
そういう素直なところも、由来の良いところであり、承太郎からしたら、
・・・・・・・
少し厄介だった。
嘘には程遠い。彼女はあまりにも真っ直ぐ過ぎるのだ。
何より決定的なのは、さっき「好き」だとはっきり……
「……やれやれ」
学生帽を深く被り直しながら、お決まりのセリフを吐いた。
そして思う。
・・・・・・
これ以上、この慣れない空気の中に2人でいると、
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むず痒くて息が詰まりそうだ。
由来の体調に問題がなさそうなのを目で確認し、ホテルの廊下へ出る。
「ちと早えが、他の奴らと合流する。あと腹が減った」
「そ、そうだね。行こ」
承太郎の後を追うように、由来はついていく。
若干足が速いのが気になる。
(そんなにお腹空いているの?)
由来はDIOとの因縁について思い悩む必要がなくなったことで、気持ちがスッキリしていた。
他の皆には、特に承太郎には、今まで何度も助けられたことがある。
だから、それらの恩を返すように、この先の旅に臨みたいと。
忠誠心に近いような気持ちで、従順に願っていた。
一方で、承太郎は逆に、今まで体験したことのないような感情が疼いて、気持ちがモヤモヤしていた。
それらを紛らわすかのように、無意識に足取りが速くなる。
由来に苦手意識を持たれていないことが分かり、
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自分が思っている以上に
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自分が喜んでいることに、
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素直に喜べなかった。
彼女から送られる感謝の言葉や、自分に向けられる優しい眼差しや表情。
それらを快く受け止めるには、胸騒ぎが邪魔して上手くできない。
今まで警察沙汰になったり、他校の不良に因縁をつけられたりすることはあっても、真正面から「ありがとう」と言われることはなかった。
要するに、シンガポールの時と同じように、
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慣れていないのだった。
それは単に、不慣れによる戸惑いなのか。
それとも、全く違う"想い入れ"なのか。
お互いに気付くのは、そう遠くない話であった。