第14章 告白と小さなお別れ
「って、あれ?」
花京院はポルナレフに一瞬気を取られたせいで、承太郎が姿を消したことに気づかなかった。
(いない?!ど、どこへ…!?)
ホテル前の街路には、由来しか確認できない。
ハイエロファントをうまく這らせても、身長195cmの目立つ承太郎を、いっぺんたりとも目視できない。
(いくらポルナレフに気を取られたとはいえ、あくびで目を閉じた一瞬くらいの間に、一体どこへ……)
「お?承太郎じゃあねえか?」
「!!?」
花京院は体を跳ね上がらせながら背後を振り向くと、確かにそこにいた。195cmの目立つ存在が。
(い、いつの間に…?!)
バカな!ホテルの外からこの部屋に入ってくるまで、エレベーターを使ったとしても、少なくとも5分はかかるはずだ。
なのに、たった1分で来るなんて……
承太郎が少し薄ら笑いを浮かべて、部屋の出入り口付近に背中で寄りかかっていた。
「楽しんで観察していたみたいだな。随分といい趣味なこった」
ギクリッ!!
しかもとっくに気付かれていた。
「……う、うん。いい趣味だろう?」
その後、ポルナレフの誘いで、3人でトランプをすることとなった。
花京院は承太郎の鋭い目つきと目が合うたび、心臓を直接握られるような感覚を覚えた。
(もう2度と、覗き見なんてしない…!)
ゲーム好きな花京院が、トランプがお開きになった途端に一番早くに部屋を出た。
(あの場に居続けると、心臓がもたないッ…!)
心臓の鼓動に連動して、足早でホテル内をうろつく。
行く宛のないまま、自分のやったことへの後悔ばかり頭をよぎる。
(……今度は明らかに、承太郎を不快にさせてしまっただろうな)
早足が段々とスローリーになり、気分も段々と海底に沈んでいくように落ち込んでいく。
僕は正直、この命懸けの旅の中で、承太郎や由来だけじゃなく、皆に友情のようなものを感じていた。
人の命を助けるための真剣な旅で、楽しむのは良くない。
"彼女"(由来)が思う通りであるが、それでも、僕は嬉しくて、つい笑ってしまうこともあった。
(友人ができて、
・・・・・
だからこそもっと知ってみたい。きっとそれが、度が過ぎてしまったんだろうな……)
花京院は少し辛そうに笑っていた。