第11章 そんな言葉じゃあない
「……お前、DIOと会ったことがないんだな」
「うん。それは間違いない。確かに私は断片的な記憶を奪われたけど、それは複製に近いものであって、DIOに会ってないのはしっかり覚えている」
「……」
やはり由来が嘘をついているようには見えない。
「…お前はこれから、そのDISCとやらを取り戻すために、旅を続けるのか?」
「……うん。言ってなかったけど、私は自分の能力を取り戻す。もう迷いはなくなったから」
私は、スタンドが怖いとばかり思ってきた。
だからせめて、人に害を与えず、陰ながら人助けすれば、少しは楽になれた。
決して人殺しの道具なんかじゃあない。DIOとは違う。
害を及ぼしかねないスタンド。そしてそれを使うことの葛藤。
私はスタンドを使うのをずっと迷っていた。
迷いながらも、自分は正しいのだと信じて言い聞かせて使ってきた。
そんなことを考えながらこの戦いに臨んでいたなんて、ふざけてるな。
そりゃ敵に負けるわけだ。
“人助けなど偽物の願いを持つ偽者ふぜいが”
敵が言っていたことのいくつかは本当だった。
人助けは、スタンドの脅威を隠すための目くらまし。ただ周りを道具にしていたに過ぎなかった。
“フフフ。つくづく哀れな女よのう由来。お前は自分のスタンドの恐ろしさを一番よく分かっていながら、人助けという手段でごまかし続けるとは”
“お前のその思いやりとやらは、全ては自分のスタンドが秘める本性の刃を隠すための仮面に過ぎん”
だから私は偽善者だ。
皮肉なもんだ。承太郎は大事な家族を守るために使っているのに、私は
・・・・・
真逆だなんて……
(でも、もう恐れる必要はない)
本当に助けたい人たちもできた。
もう迷いはない。
私はもう、残りわずかの命を費やすなんてことを考える必要も無くなった。
腕の呪いは解かれた。防御型スタンドの本来の能力も戻った。
残り全てを取り戻せば、元のスタンドに戻る。
「私は真実を知る必要がある。敵が言っていることはどうも嘘のように思えない。だけど私は敵の仲間になった覚えもない。その矛盾をハッキリさせなければならない」