第11章 そんな言葉じゃあない
(一体、何があったんだ?)
承太郎は彼女の過去について知りたいと思った。
が同時に、それを聞くのは彼女の心の傷口をえぐることになると思った。
ただでさえ、今彼女は軽くない外傷を負っているんだ。これ以上追い詰めるわけにはいかない。
それよりも、これからのことを話すべきだと、承太郎は思い直した。
「敵がお前を付け狙っているなら、お前はこの先単独行動は絶対するな。今回のポルナレフの件で、お前も身に染みたはずだ」
「……うん。ただ、敵は私にばかり固執するのが不思議だ。私は防御型スタンドで、攻撃に特化しているわけじゃあないのに」
「……」
ここにも、敵の証言と由来の証言の食い違いが生まれた。
由来は仮死状態だったから知らないが、敵はこう言った。
『由来のこの氷の盾を破った者は、今まで誰一人としていなかった。あのDIO様でさえ、破壊し得なかった』
『だから皆は口を揃えて呼んだ。『最強の盾』と。それ自体が由来の通り名にもなっていた』
『DIO様は唯一自分に通用する能力を持つソイツを、あえて殺さず仲間に引き入れたことで、最強の守りを手に入れた』
由来はDIOの仲間ではない。それは本人に確認済みだ。
だが、嘘っぱちな敵は由来の能力を言い当てていた。
しかも嘘にしては妙にリアルなシナリオだった。
それに何より、今までの刺客たちの言葉も思い返してみると……
肉の芽で洗脳されていた花京院。
『そして…あの方が仰っていた“厄介者”とは貴様か』
香港を出た船にいた偽物の船長。
『あんたの能力。本気になればかなり厄介だとDIO様は警戒してたからな。先に足止めしておこうと思ったが』
シンガポールで出会った偽物の花京院の野郎。
『俺たちはDIOに「由来
・・
には細心の注意を払え」と念を押されている!』
今思えば、DIOは相当に由来を警戒しているように見受ける。
(多くの手下を従わせるほど、その力は圧倒的かと思いきや、小心者なところもあるってこと、か……)
・・・・・・・
何らかの原因で覚えていないだけで、由来はすでにDIOと会っていたから、DIOはその能力を知っていた。
そう考えれば辻褄は合ってるが……
「どうしたの?そんな深刻そうな顔して」