第11章 そんな言葉じゃあない
私はDIOの仲間なんかじゃあない。敵が言っていることは嘘だ。
でも、あの必死ぶり。私を懐かしむような目。
演技ではなかった。
ジョースターさんたちに私に対する不信感を抱かせるためのはったりと思っていたが、そうじゃあなさそうだった。
なら考えられるのは、やはり人違いの可能性が高い。
私は今回の戦いで、生け捕りなんて敵のふざけた目的を知った。
一度私は死んだ。だけどDISCを取り戻せば生き返ることができるなら、敵が殺してでも私を生け捕りにしたかったんだと納得がいく。
今回は運良く命を取られずに、片目だけで犠牲は済んだ。
次に戦うときは、本当に死ぬかもしれない。
それでも私は、このたびを続ける必要がある。
単独行動は極力控える。決して独りでは戦わない。
「……そうか」
承太郎から見たら、由来は以前より表情が少し晴れやかになった気がした。
迷いがなくなった顔だ。
“な、何故だ……実の母親に見捨てられ、憎み、その人生でさえ呪われたお前が…何故親子の絆とやらを救うの…だ……?”
(敵がコイツに放った言葉。あれは聞かなかったことにするか…)
にしてもあの敵の野郎、よりにもよって目を奪いやがるとは……
片目じゃあ、満足にピアノも弾けねえってやつだぜ。
“人助けなど偽物の願いを持つ偽者ふぜいが”
承太郎は敵の言葉を思い出した。
「……敵が何を言おうと、お前がやってきたことは決して偽物なんかじゃあねえよ」
「!」
「少なくとも、俺以外にそう思ってる奴は
・・・・・・
もう1人いる」
・・・・
もう1人?
承太郎は窓の外に目を留めて、由来もそれにつられた。
「!」
窓の向こうには、別の病棟の窓がずらりと並び、その中に、こちらに大きく手を振っている小さな姿があった。
(あの子は…!)
昨日のレストランで知り合い、今回敵の術中にはまりながらも何とか救助した少女。インディラだつた。
戦いの後、ジョースターさんがこの同じ病院に運んでくれたのか。
(無事でよかった……)
すると窓の向こうのインディラは、何やらごそごそしだし、布団の中から何かを取り出した。
白い板のようなものだ。そこには大きくこう書かれていた。
“Thank you for helping me
(助けてくれてありがとう)”