第5章 シンガポールの“暇”(いとま)
(花京院くんに化けているスタンド使いは一体どこなんだろう? さっきヤシ屋さんで一緒にいたのはその偽物だとすると、彼はもうすでに…)
DIOはジョースターの血統である彼とジョースターさんを真っ先に狙う。
一緒にいるアンは大丈夫なのだろうか?
いくら彼でも、無力な女の子を庇って戦うことは困難だ。
あの時、偽花京院くんの誘いを受けていたら、こんな事にならなかったかもしれない。
今回の失態は私の責任。
自分の失敗は自分で片を付ける。
このままホテルに戻りながら、その敵と彼を見つけるのが得策か…
由来は歩く方向を変え、自分たちのホテルへ向かった。
(目がかすむ…足と腕に力があまり入らない)
由来は壁に体重をかけながら、何とか足を進める。
まさか…こんな…時に…
ドッ
不注意で、曲がり角で誰かとぶつかった。
「わっ…ご、ごめんなさ…」
俯いて歩いていたので、顔を上げてぶつかった相手を見た。
「あ…!」
数分前
承太郎はとある場所へ向かっていた。
一緒にいるはずのアンはそばにはいなかった。
彼はついさっきまで、花京院に化けていたスタンド使いと対峙していた。
アンは運良く離れられ、ジョセフの判断でホテルにすでに戻っていた。
承太郎は卑劣で哀れな敵にオラオラをぶちかまし、今はジョセフたちと合流するために動いていた。
そして、敵から得た貴重な情報を頭の中で整理していた。
両腕とも右手の男。ポルナレフの妹の敵の能力に、鏡が深く関係している
(そして“あの情報”…まさか…)
考えるのはあとだ。今は早く皆と合流したほうが最善そうだな
しかし承太郎は、ホテルへ向かっていなかった。理由は、
(そして今気になっているのは、ここらへんで“発砲音”が聞こえたってことだ)
3発も。それなのにパトカーのサイレンが全く聞こえねえ
今誰も駆けつけてねえのに、さっき3発も聞こえたのはおかしい
承太郎は子供の頃、刑事コロンボが好きだった影響で細かいことが気になると夜も眠れないタチだった。
ドッ
すると曲がり角で誰かとぶつかった。
ぶつかってきた相手は俯いていて、あまり前を見ていない感じだった。
一体誰だと思ったら、それは思わぬ人物。
部屋で寝ていたはずの由来だった。
「!!」
「あ…!」