第5章 【よん 雛鳥はテンガロンハットが苦手】
呆然とするしかない。
ここは何もない大海原。この船はエネルギーで動くタイプではなくて、普通の船。ヨットみたいに、風や潮の流れで動かす船だから。
帆に穴が空くと動かなくなってしまう。
「あ、穴を塞ぐだけなら、なんとか……!!」
さて、それもどこまで持つだろう。
私は素人で。風の力は予想以上に強い。
そんな素人の応急処置で、どこまで動かすことが出来るんだろうか。
「もう……最悪……」
残された道はウエンディの力を借りながら、手漕ぎで動かす方法のみ。
ウエンディは自然の流れに逆らってはくれないから、島に辿り着けるかは運次第になってくる。
ため息を吐いてオールを取り出した。
ずっしりと重みのあるオールに、またため息が出そうになる。
漕ぎ方、教わっといて良かったなとは思うけど……疲れるし大変だから、出来れば使いたくなかったよ……
あまりの出来事に意気消沈していた私は、すっかり周りのことなんか頭からすっぽ抜けていた。
あの船のことも。実は近くから聞こえるエンジン音のような爆音も。