第4章 リョーマの懇願
呼吸が、止まった。
え、なんていったの?
なんて、いったの?
リョーマは流暢な英語でそれを告げた。
リョーマが英語を話せるということと、その意味。
聞き取りが正しければさほど、難しい英語ではないということはわかっていた。
止まることなく流れていた時間。
つまずくことなく、流れていた時間。
それが、突然止まった気がした。
リョーマが告げた英語の意味、それは。
(キ ョ ウ、 ダ イ テ イ イ ?)
リョーマの言葉が、の頭の中で彷徨いつづけてる。
間違っていなければ
間違っていなければ
多分リョーマはそういった。
初めてリョーマに会ったときの驚愕が蘇る。
「と、したい」
止まっている筈の時間なのに、続けられるリョーマの言葉。
は頭の中で回る、リョーマの言葉を振り切って。
「な、な、なななに言ってんのっ…!」
明らかに動揺してしまったけれど、冗談だよというリョーマの言葉を待っていたのに、それはなくて。
リョーマの顔を見たら誤魔化すことは既に不可能だと思った。
というより、冗談ではない顔だった。
「どうして、そんな…っ、あたしたちそんな関係じゃないでしょ?」
そう、違う。
リョーマが私を好きだなんて感じたことはない。
なのにどうして、
その場の大きな石に座っていたの前にリョーマは一歩ずつ近づいて。
ポケットに突っ込んでいた片方の手をの肩においた。
「リョーマく……」
言いかけたの言葉は、そのまま言葉になることはなかった。
変わりに、段々と口元から音が漏れていく。
リョーマを受け入れてしまった、の口は少しずつ開いて僅かに出来た隙間から呼吸をする。
するっと空気が入り込んだら、リョーマはゆっくりと離れた。
唇の重なった感覚が消えて、はゆっくりと目を開ける。
そして、耳に入り込んだリョーマの声。
「しても……いい?」
もう、何かを考える余裕はなかった。
順番とか、そんなのどうでもいい。
ただ、この人に
リョーマに、そうされたいと思った。
肩に手を置かれたまま、見つめる視線の先。
は、自分の服の一番上のボタンを一つだけ外して。
「いいよ」