第3章 May I hold you today?
存在を認めたかった。リョーマと話をすることで。
けれど
この越前リョーマに、一目ぼれ…………だと思う。
大好きな主人公に似ているリョーマに。
まさかの出会い。
まるで次元の壁が開いたような出会い。
そこにいる彼。
言葉を交わすことができる彼。
私を
見る
越前リョーマ
こんなことがあってもいいんじゃない?
こんな始まりでもいいんじゃない?
今日、この道を選んだのはリョーマに会うため。
私がリョーマに恋をするため。
運命の出会い。
さらさらな髪。
生意気そうな大きな目。
細くて小さい身体。
少し低くて甘い声。
大好きでも会えなかったあの主人公。
私は、この越前リョーマに恋をした。
「リョーマ…………くん!また会える?」
毎週水曜日のこの時間は、この場所でリョーマと会う。
今日は、4回目の水曜日だった。
リョーマのテニスを見つめては、ひたすら会話を続ける。
リョーマの反応は、ぱっとしたものじゃないけれど、それでも幸せだった。
リョーマと一緒にいられること。
それが今の幸せ。
けれど、今日のリョーマの様子はどこか違って。
打ち続けるラケットにも、なんとなく勢いが感じられなくて。
リョーマには似合わないミスの繰り返し。
の言葉にも、反応を示さず。
「リョーマくん……?なにかあったの?」
溜まりかねたは声をかける。
すると、今まで何も反応を示さなかったリョ-マは動きを止めた。
「リョーマくん?」
もう一度、彼の名を呼んだ。
二度目のの呼びかけは、リョーマの言葉を呼んだ。
「」
大きな目でまっすぐ見つめてくるリョーマ。
吸い込まれそうな綺麗な瞳。
好きだと思った。
改めて、リョーマのことが。
「……May I hold you today?」