第2章 似すぎてる
「!?」
振返った、彼の顔に驚いた。
似てる………………
が惚れ込んでいる、漫画の主人公にその彼はそっくりで。
はぺたんとそこに座り込んだ。
そんなこと、そんなことあるわけない。
なんで、でも、なんで、こんなに似ているんだろう…………
髪型、背格好、ラケットの色
身体がガクガクして、この場所から動くことが出来ない。
既に自分の存在に気付いていて、自分を見ている彼から目が離せない。
あまりの驚きに身体はますます硬直していく一方で。
は息を吸い込んだ。
「ねえ」
上を走る車の音がうるさかったけれど、確かに彼は声を発した。
「どうかした?」
ラケットを肩に担いで、を見つめていた彼は続けて。
「腰、抜けたとか?」
彼の言葉には返答の仕様がなくて、首を縦に振ってみたり、横に何度も振ってみたり。
彼は少しだけ口角を上げて、ラケットを持ち替えボールを打つ。
彼のパワーを吸収したボールは、音を立てて壁に跳ね返った。
「テニス、好きなの?」
壁を相手に打ち返しながら、彼は話を続ける。
「え?な、なんで」
硬直していた身体全体が、少しずつ自由を纏って答えた。
「見てたじゃん、ずっと」
響くボールの音。
そうか、気付いてたんだ、私が見ていたこと。
は軽く咳払いをして。
「好きだよ、テニス」
「へえ」
彼が打っている壁とは少し離れているから、声を大きめにして話す。
だから余計に響いて。
「……あの!名前…………!なんていうの!」
今しがた、会話が成り立ったばかりだというのに名前を聞いた。
大好きなあの主人公にそっくりな彼。
何を確かめるわけでもなくて名前を知ってこの存在を本物にしたかったから。
彼はちょうどラケットに向かって跳ね返ってきたボールを、手でキャッチして。
の方を振り返って言った。
「越前リョーマ」