第1章 出会い
振り返ったら、アイツがいた。
生意気そうで中学生とは思えないような強い、強い、眼差しだった。
一瞬で、私の目を釘付けにしたアイツ。
アイツから、目を離すことがまるで許されなかったかのように。
アイツの表現は、いつも自身満々で
私を夢中にさせた。
今でも、ずっと………………
なんとなく通った道。いつもは違う道から帰るのに、今日はなんとなくこの道を通った。
別に深い意味があったのではなくて。
ただ足を進めるうちに、この道に入っていた。
「ああ…………今日も疲れた……」
長い一日を終えて、は一人帰宅中。
なんとなく遠回りをしてしまったから、まだ自宅までは距離があると思い、バッグからウォークマンを取り出し耳につけようとしたとき。
スパーン
何かをはじく音がした。
この音。
「テニス!?テニスの音がする!」
は走って、音がするほうへ進む。
にとって今、一番興味のあること。
テニス。
今、夢中になって読んでいる漫画がテニス漫画で。
その主人公にどうしようもないくらいハマっていて。
「うう、どこだろう……どこから聞こえてくるんだろう……」
あたりをキョロキョロ見回して、音にも耳を済ませる。
高鳴る鼓動、期待が湧き上がる。
近づいてくるボールを打ち付ける音。
「あ!あそこだ!」
上に大きな道路が走る、その下で壁を相手に打っている誰か。
はもう一度走って、その場所に近づいた。
その人物が気付いた様子は感じられず、ひたすらボールを打ちつづけている。
さらっとした、彼の髪の毛は踊るように揺れていて。
「あの髪型似てるなあ……」
覗くように見ながら、呟いたとき突然振返られた。