【ハンターハンター】暗殺者のクオーレ・プーロ【イルミ】
第8章 Water lily -信頼-
ドフッ
瞼の先が陰り、すぐ近くで大きなものが地面を蹴る足音が聞こえた。
考えたくない考えたくない…。
まさか目の前にいるなんてこと…考えたくない。
私はゆっくりと目を開ける。
「あ…あぁ…」
やっぱり、見つかっていた。
目の前まで迫っていた黒い獣は、口元を私に近づけて来る。
大きな鼻息が私の髪を揺らす。
ただカタカタと震え、この場から動くことができない。
ぎゅっとまた目を閉じ、バクバクと鳴る左胸を押さえるように服を掴む。
「ッ…」
体に力を入れ、その時を今か今かと待つ。
…しかし、一向に噛みつかれない。
恐る恐る片目だけを開けてみる。
「ハッハッハッ!」
その獣はじっと私を見つめ、何かに喜ぶ子犬のようにただ尻尾を振っていた。
私はポカンとしながら獣を見つめ返す。
どうして私は襲わないの?
どうしてそんなに喜んでいるの?
私は驚きと不可解な出来事に声が出なくなってしまう。
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