第1章 翔べない鳥
「だいぶ気に入られたみたいだな」
そうみたいですね、とは言えず
淹れてもらった冷たいハーブティーを喉に流し込んだ
ちょっと薬っぽくて、なんとも不思議な味だ
「さて、と。
風呂に入ってくる。」
「…あっ、行ってらっしゃ…」
…ちょっと待て。
風呂にはさっき智さんが入りに行ったばかり
――― あぁ、浴室は広かったし、あれだけあれば男二人くらい余裕で ―――
…え? 二人…?
翔さんと智さん、一緒に風呂に入るの…?
二人はやっぱり、そういう関係 ―――
そんな事を意識してしまったら、変に心臓がバクバクして
偏見なんてないけど、うわぁ、凄いとこに来ちゃった、って
やっぱり俺、此処に居ちゃイケナイんじゃないか?
二人にとって色々と不都合なんじゃないか?
帰る所なんて無いけど、今すぐ帰りたい
「………あぁ、マジどーしよ…」
「何が?」
「わぁっ…!」
濡れた髪のまま、身体のサイズに合っていない大きなTシャツを着ただけの、
「…っ、早かったですね、智さん、」
「僕、烏の行水なんだよね」
大きく開いた首元からは細い肩がチラチラと見えていて
「僕にもコレ、ちょうだい?」
「えっ、でも、」
ソレは俺が口を付けたヤツ
そんな事も気にせずにゴクゴクと飲み下す姿は
なんて言うか…
なんだろう、この人
男なのに… もの凄く、色っぽい