第1章 翔べない鳥
「フフッ」
「……」
「あははっ」
「……」
話をするのは翔さんが風呂から出てからにしよう、と
それまでテレビを見てるのはいいんだけど…
智さんがソファーの肘掛けにもたれ掛かって足を組んでるから
Tシャツがミニスカートみたいになって、そこから伸びてる生足が女の子みたいでちょっとだけドキドキしてしまう
「さっき、翔くんから聞いたよ
カズくんを此処に連れてきた理由」
智さんはじっとテレビ画面を見つめたまま、
「僕もね、翔くんに拾われたんだ」
「……」
ピッとリモコンを押してテレビの電源を落とすと
視線を俺へと移した
「翔くんに任せておけばきっと大丈夫だから
カズくんは安心して此処にいてね…?」
また『大丈夫』って言われた
智さんがふわりと俺を抱きしめる
不思議と同情されてるんだ、とは思わなかった
だけど…なんて返事を返したらいいのか
此処に居させてもらえるのは有り難い話だけど、
「……ひとつだけ、」
「えっ…?」
「一つだけ、お願いがあるんだ」
「お願い…?」
スッと身体を離すと
不安に怯える子犬の様な瞳で告げられたんだ
「翔くんを好きにならないで ――――」