第6章 君に触れて
別荘に運び入れると生瀬は淡々と彼の手当てをし、俺は身体を優しく拭いた
暫くして目を覚ましたコウタは俺達を見て、もう一度“ありがとう”と言った
『旦那様がお帰りになる前に私は戻らねばなりません。
コウタさん、私と一緒に参りましょう。受け入れ先の目星はついています』
『駄目だよ、生瀬。
彼は衰弱してるんだ。もう少し此処に置いてあげて』
『しかし…』
『僕が面倒をみるよ。食料は充分にあるし、着替えも僕のがある。
生瀬は家に戻って。父の逆鱗に触れたら大変な事になるのは良くわかってるだろ?
…僕は大丈夫だから』
生瀬は俺とコウタを二人きりにする事に難色を示していたけど、衰弱しきっているコウタが俺に手出しするとは考えにくかったんだろう
元々二泊三日の予定だったから、明後日の朝イチで此方に迎えに来ると言って渋々戻って行った
『生瀬さんて…家政婦の男バージョンの人…?
雅紀さんちって…お金持ち…なんだね…』
まともに身体も動かせず、会話するのも億劫だろうによく喋る子だなと思った
『そんな事はいいから。
何か食べれそう? 少しでも口にした方がいい』
『少しなら…
その前に…水… 水が飲みたい…』