第6章 君に触れて
「…そんな風に言うな」
「優しいんだね、雅紀さん」
哀しみを含んだ微笑みを浮かべながら
コウタの掌が俺の頬を優しく包む
「優しすぎるんだよ、貴方は」
一瞬、唇が重なって直ぐに離れて行った
「だから僕みたいなのにつけ込まれるんだよ?」
一年前の春。
東京の高校に進学する俺の為に友達がお別れパーティーをしてくれる事になったから別荘を貸して欲しいと父に嘘をついた
本当は友達なんて一人も居なかった
中学の三年間で、一人も。
それは俺自身が…他人と関わることを極端に避けていたからだ
その原因を作ったのもまた、父だった
ドライバーは付けず、生瀬の運転で別荘に向かった
生瀬だけが本当の事を知っていた
その道中で出逢ったのが、コウタだった
『…何だ、アレは』
『生瀬、車停めて!』
山道に置かれた黒いビニール袋がモゾモゾと動いている
ゴロンと横に倒れたソレを見て血の気が引いた
ビニール袋の縛り口の先に見えたモノ
それは紛れもなく、人間の頭部だった