第6章 君に触れて
ディナーをしながら他愛もない話をして。
話と言っても俺は聞き役で、お喋り好きな紗羅に相打ちを打つだけ
…たった二時間
その二時間が、今日の俺にとってはとてつもなく苦痛で
まだ本調子ではないんだ、と嘘をついて早目に切り上げた
そんな事も見越してか、此処のホテルの一室を既に抑えてあるんだから生瀬はやっぱり有能な執事だよ
「お務めご苦労様」
「…来てたのか」
「生瀬さんに呼ばれてね」
生瀬が部屋を抑えていると聞いた時点で、コイツが来ている事はなんとなく予想がついていた
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めると
ソイツは俺に近づいて纏っていたガウンをパラリと床に落とし、細い腕を首に巻きつけて耳元で囁いた
「イライラしてるんでしょ?
好きにしてイイよ、雅紀さん…」
「コウタ…」
急速に抱き上げ、乱暴にベッドに押し倒す
「イイネ、その目…
別荘に行ってたんだって? 誰と居たの?男?
まぁ誰でもイイけど、」
「黙れよ…」
「怒んないでよ。
イイよ…? 僕の事、その人だと思ってさ…ね?」