第6章 君に触れて
「水、持ってきた。
入るよ? 電気点けるね」
「ん…」
目を瞑っていても解るその眩しさに眉をしかめる
「大丈夫…?」
「…大丈夫。 ただの寝不足だよ…」
胸元を握りしめている俺の左手に、智さんの右手がそっと触れた
「相葉ちゃん酷いよ…
カズくんがこんなになるまでスるなんて…」
「…特にキツくしごかれた訳じゃないよ…
教え方も上手かったし…」
「し、しごっ⁉」
「パーフェクトももらえたしさ……」
「パーフェクト……」
「アノ人…見掛けによらず凄いんだね…」
「…そ、そうなの……?」
「本番が……楽しみだよ…
イケそうな気が……してきた………」
「イケそう、って… ちょっと、カズくん⁉」
スローモーションの様に遠ざかる智さんの声が、なんだか心地良かった
まさかこの時の会話が原因で、智さんに盛大な勘違いをされていたとはつゆほども知らず
呑気な俺は、ここニ日分の睡眠不足を解消するべく
深い深い眠りの中に堕ちて行った