第5章 最低で最悪なアイツ
「甘いのは嫌い?」
「…そうじゃないけど。
仕事場で貰える無料のコーヒーがブラックだったから飲んでたってだけ」
昼飯を食べない事を心配されるから、昼休憩の時はコーヒーの入った紙コップを持って工場の敷地内の端っこの方で時間を潰していた
最初は苦くて苦手だったブラックコーヒーも普通に飲めるようになって。
あんな事がなきゃ今でもあそこで働いてたんだろうな…
「大まかな事はおーちゃんから聞いてるよ。
…苦労したんだってね。
あー、でも勘違いしないで? しつこく聞いたのは俺の方だから」
「それで可哀想な俺に勉強の一つも教えてやろうって?」
「そんなんじゃないよ」
目の前のアイス珈琲の氷がグラスの中でカランと音を立てる
「俺がカズくんに興味があったから。単純にそれだけ」
「なんだよ、興味って。
アンタって人の不幸話聞いて楽しみたいタイプ? 随分と悪趣味だね」
「どうしてそうも捻くれた考え方するかなぁ?
そのまんまだよ、言葉通り。
おーちゃんからカズくんの写真見せられて、どんな子なのか知りたくなって。
知ったら会ってみたくなった。
会ってみたら触れたくなって、触れたら…」
「触れたら、なんだよ」
「…この話はもうおしまい。
続きはカズくんが495点以上取れたら話す事にするよ」
「なんだよ、それ…」
ホントなんなんだよ、オマエ…