第1章 翔べない鳥
「話は食い終わってから、だろ?」
翔さんに『腹が減ってるんだから先ずは食わせてやれ』と言われて、智さんは拗ねた様に唇を尖らせた
「翔くんのケチ。いいじゃん、ちょっとくらい。ねぇ?」
赤の他人の俺を温かく迎え入れてくれて
こんなに豪華な食事までご馳走してくれて
食事の最中だけど
自己紹介くらいはちゃんとしとかないと…
そう思って俺は、口の中のソテーを飲み込むと
フーッと息を整えてから顔を上げた
「和也、です
二宮、和也って言います」
「和也くんね?僕は大野智。で、彼は櫻井翔。
気付いてると思うけど、家主は翔くんで僕は居候の身ね」
居候…俺と、同じ?
「おい、智。俺はお前を居候だなんて思った事はないぞ?」
「んふふ。知ってる」
なんか…雰囲気甘くないか?
俺、お邪魔虫じゃないだろうか
「…あの、」
「うん?」
「…お二人はどういった…?」
「家主と居候。
それ以上でもそれ以下でもないよ」
顔色一つ変えない翔さんを他所に、そう言い切った智さんの瞳が少しだけ哀し気に感じるのは何故だろうか
「そう…ですか、」
「詳細は追々、ね?
ホラ、早く食べちゃおう ――――」
夕飯は極上に美味かった
揃って掌を合わせて“ごちそうさま”をした後、片付けを手伝うと言ったけど智さんに無理矢理風呂場へと押し込まれた
「コレ、僕ので良かったらお風呂上がりに着てね?」
「すみません、お借りします」
温かいシャワーなんて何ヶ月ぶりだろう
ガスはずっと止められていたから、風呂といったら二日に一度…真冬でも冷たい水を被っていた
湯船に浸かるのは何年ぶりかな
温かい
凄く、温かいよ…