第1章 翔べない鳥
「…凄っ」
テーブルに並べられた夕飯は
夕飯なんて言い方は失礼になるんじゃないか、位の
それはそれは豪華なディナーで
こんな凄いの、全部、智さんが…?
食事といったら万年具無しのインスタントラーメンだった俺にはあまりにも立派すぎて
胃がびっくりしないか…?なんて
変に躊躇しちゃって
「沢山食べてね?」
「…っ、はい、」
「では、両手を合わせて」
「「いただきます」」
「…イタダキマス、」
見様見真似でフォークとナイフを握って
高級(たか)そうな肉をカットして一口口に入れた
「美味っ」
思わず声に出ちゃって
しまった、と思った時には二人から優しい瞳で見つめられていて
恥ずかしくて下を向いた
「良かったぁ。スープも冷めないうちに、ね?」
「…はい、」
野菜たっぷりのスープは
身体の芯まで温まるようで
「あぁ…」
オッサンみたいだな、って自分自身にツッコミを入れた
「見てないで智も食え」
「そうだった、忘れてた」
チラッと智さんの方を見ると
ニコニコしてまだ一口も食べていない
「翔くんがこんな可愛い子連れて来てくれて、僕の作ったものを美味しそうに食べてくれるし、なんか嬉しくて」
可愛い子…?俺が?
それに嬉しい、だって?
「俺だっていつも美味いって言ってるだろ」
「そうだけどさぁ
なんか、兄弟が出来たみたいで。
ねぇ、君。名前は?
うちの子にならない?」
「…へっ?」
名前を聞かれたすぐ後に
うちの子にならないか、って
ニコニコしながら俺の答えを待ってるけど
…悪い冗談? それとも本気…?
話が飛躍し過ぎて頭が付いていかない