第5章 最低で最悪なアイツ
コイツ細いのに腹筋割れてんなぁ、なんて
こんな状況下でも頭は冷静に働くモンなんだと妙なトコで感心する
最低で最悪な男
その男に『俺から手を離すなよ』と言われて
俺も俺で素直に言う事聞いちゃってさ
ガッチリしがみついてるのは、慣れないバイクの後ろから振り落とされない様にする為。
だだ、それだけの事で ―――
「着いたよ。
狭いトコだけど綺麗にはなってるから」
文字通り風を切って辿り着いた場所は
360度緑に囲まれた美しいログハウスで、奥の方には小さな湖が見える
思わず深呼吸したくなるような森林の香り
山を越えてそよぐ風が心地良くて、自然と目を瞑った
「さぁ、入って」
クスッと笑われた気がするけど気にするもんか
「うわっ…!」
「っ、と。階段気を付けて」
「……ありがとう、ゴザイマス」
此処でコケるのを見越したように腕を支えられて
余裕綽々な感じがやっぱり、ムカつく