第5章 最低で最悪なアイツ
「そろそろだね」
迎えに行くと言われた時間まであと少し
スニーカーを履いてマンションの1階に降りると、ピッタリ時間を合わせるように一台のバイクが目の前に停まった
「お待たせ」
制服姿の時には垣間見えなかった、ワイルドな男っぽさを纏って
フルフェイスのシールドを上げて微笑むその人は、
「すごーい! 相葉ちゃん、バイクなんて乗れるの⁉」
「せっかく天気もイイからさ。
カズくん、バイクは初めて?」
「初めて、です…」
「安全運転で行くから大丈夫だよ。
じゃあコレ被って、後ろに乗って?」
「…これでいいんですか?」
渡されたヘルメットを被り、おずおずと後ろのシートに跨った
「しっかり捕まって?
じゃないと振り落とされちゃう」
「っ、こう?」
「もっと。もっとしっかり」
遠慮がちに回した手を、ギュッとされて。
…これじゃあ、抱き付いてるのと同じじゃんか
「じゃあね、おーちゃん。行ってきます!」
「行ってらっしゃい! 気を付けてね!」
「…行ってきます、」
――― 俺から手を離すなよ? ―――
ヘルメットにくぐもった声が耳元を掠めて
ふざけんな、バカ
…ちょっとドキッとしちまっただろうが