第4章 嘘つきは恋人の始まり
「元気そうやねぇ」
目尻にシワを寄せて智さんの髪をワシャワシャと撫でるこの人は、
「元気だよ。
ママは? お店忙しいの?」
「ぼちぼちやねぇ
バイト雇ってへんから忙しいっちゃ忙しいけどな
サトの顔見たら元気出たわ」
遠目じゃわからないけど、男だ
智さんを見る目がとてつもなく優しい
所謂、オカマさん…なんだと思う
その類の人に会ったのは初めてだけど、嫌悪感は無かった
「今日は僕の弟を紹介したくて連れてきたの」
「弟?」
「うん。カズくんだよ。
昨日から一緒に住み始めたんだ」
「ほな、櫻井さんが?
あの人も相変わらずやなぁ」
ペコリと頭を下げると
ママさんはふわりと優しく微笑んだ
「カズくんな。
サトの弟だけあって可愛い子やねぇ。
ほらほら、そこ座りや?
オレンジジュースでええか?」
まだ開店前なんだろうか
テーブル席を案内されて、俺たちはそこに座った
「さっき、話したでしょ?」
「え?」
「僕がお世話になってたボーイズバーの話。
ママはそこのマスターだったんだよ」
あぁ、なるほど…。