第3章 約束
頭から熱いシャワーを浴びた
身体を伝って排水口に吸い込まれて行くソレをただじっと見つめていると
俺の中の迷いもためらいも
常識も倫理も、全て
一緒に流されてしまえばいいのにと思えた
例えそれが、社会的に赦されざる罪だとしても
潤さんに対する、裏切り行為だとしても
智は今、俺がそこに行くのをどんな気持ちで待ってるんだろうか ――――
『…っ、遅いよ』
腰にタオルを巻いただけの智が
脱衣所を出てすぐの廊下で小さく体育座りをしていた
『ドア、三つもあるからどの部屋かわかんないし
仕事のモノとかあるだろうから勝手に開けない方がいいのかなって思って、』
『だからこんな所で待ってたのか』
『うん…』
適当にドアを開けてクローゼットを探れば
Tシャツの一枚くらい出てきただろうに、お前は
『…真ん中。
手前の部屋は物置きだけど殆ど空っぽだ。
奥が仕事部屋で真ん中が俺の寝室』
伸ばした手を遠慮がちに握り返すから
『おいで』
そのまま腕を引いて抱き寄せた
あれだけ悩んで答えを出せずにいたのが嘘みたいに
この時にはもう、不思議なくらい迷いなんてなかった