第3章 約束
『…翔くんも入ってきなよ』
『あぁ…』
すれ違いざまに目で追った智の背中は
随分と逞しくなっていて
子供だと思ってたけど時の流れは早いな、なんて
『ふはっ…』
やっぱり親戚のオジサン目線は抜けないな
こればっかりはどうしようもないけど
“僕を抱いてよ”
本気の色をした智の瞳は
あの頃の真っ直ぐな瞳のままだった
『抱く、ったってな…』
男の抱き方は知らない訳じゃない
智の事は、好きだ
好きだし、大切に思ってる
ただ
リアルに智を抱く事を考えた事はなかった
…必死で考えないようにしていたと言った方が正しいのかもしれないけど
あぁ、でも
彼女に智を重ねた事はあったかも知れない
『俺、最低だな…』
“別れよう”
4年も付き合った割にあっさり別れを切り出せたのは
智に似いていると思っていた彼女から言われた言葉がきっかけだった
“私とその先輩の子供と、どっちが大事なのよ”
彼氏らしい時間の使い方をしてやれなかったのは申し訳なかったと思う
でも
あの時既に
いや、それよりもっと前に
俺の中で答えは決まっていたのに