第1章 翔べない鳥
「離せよっ...!」
「嫌だね」
クソッ...なんて馬鹿力なんだ
ヒーロー気取りかよ
笑わせんな...!
「離せって! この偽善者!」
「散々な言われようだな
お前が此処に立った理由を話したら考えてやってもいいけど?」
「うるせぇ!
俺にかまうんじゃねぇよ!
アンタに何がわかるんだよ!
俺がどんな思いで......!」
どれだけ逃げたって
奴らは必ず俺を捕まえに来る
「大丈夫だ」
「はぁ?!
何が大丈夫なんだよ! ふざけんなよ!」
「大丈夫 ___ 」
なんて心地良い低音なんだろう、なんて
この場に及んでそんな事
カサついてボロボロに荒んだ俺の心が
少し...ほんの少しだけ、穏やかになった気がして
なんだろう...戦意喪失?
身体からフッと力が抜けた瞬間、この人の俺を押さえ込む腕の力も同じ様に抜けて
今度は柔らかく
優しく抱きしめてくれた
本当の親ってこんな感じなんだろうか
温かくて、優しくて
無償の愛で子供を包み込んでくれるような
「全部吐き出して楽になれよ
丸ごと受け止めてやる」
なんで
なんでこんな、
「泣いてもいい」
あぁ...
恥ずかしくて擽ったい
頭なんて撫でられたの、何年ぶりかな
どれだけ過去を辿っても
記憶に残ってねぇや...