第2章 二人の関係
二人の結婚と出産に特に反対していた母方の祖父母や親戚に、潤さんは酷く責められたそうだ
見兼ねた潤さんの両親は、二人を実家に迎え入れようとしたけど
潤さんはそれを頑なに拒んだ
二人で用意したベビーベッドに
翔さんがプレゼントしてくれた赤ちゃん用の玩具
それに奥さんと、お腹の中の智さんと三人で過ごした思い出の小さなアパートを
潤さんは手放そうとしなかった
「そりゃ、酷い所だったんだよ?
ゴキブリは出るし、隙間風はハンパないし」
それでも男二人だけの生活は幸せだったそうだ
保育所のお迎えには翔さんが来てくれたこともあった
『智! 迎えに来たぞぉ!』
『あっ! しょーくん!』
従兄弟のお兄ちゃんという事にしていた翔さんの存在は保育所の先生達の間でも評判で
そんな翔さんの事が、智さんにとっても自慢だった
運動会や学芸会の時は必ず見に来てくれた
「翔くんがさ “智、頑張ったな!” って頭撫でてくれるんだよ
褒められたくて、頭を撫でてほしくて
全力で頑張った
いつ頃だったかな…
大好きなお兄ちゃんから憧れに変わって
憧れから、恋に変わったのは」
『ねぇ、おとうさん』
『うん? なんだ?』
『おとこのこがおとこのこをすきって、へんかな?』
『なんだ、智
好きな男の子のお友達がいるのか?』
『…ぼく、ぼくね、しょーくんがすきなの』
『そうか。翔も智のこと、好きだぞ?
ちっとも変なんかじゃないよ』
“しょーくん、だいすき!”って言えば
“ありがとな、智。俺も智のこと大好きだぞ!”って返してくれる
そんな二人のやり取りを見て、潤さんが微笑む
智さんにとってそれは
小さな小さな恋の始まりだったんだ