第10章 揺れる
「...ただいま」
「おかえりカズく...! カズくん、どうしたの...?」
「...何でもないよ。風呂、入ってくるね」
遅くなってしまったからと、帰りは相葉さんちの黒塗りの車で送ってもらった
別荘の時とは違う運転手さんで、なんだか鋭い目で見られてるような気もしたけど俺の頭の中はそれどころじゃなかった
「はぁ...」
シャワーを思いっきり捻り、頭から目一杯お湯を被る
『 ...これで、全部。
引いたかな... 引いたよね、』
ショック、だった
お坊ちゃんで、恵まれた環境にいるとばかり思ってたんだ
何一つ不自由なんてしてなくて、順風満帆な人生だったんだろうなって
俺は首を横に小さく振っただけで、そんな事無いって言ってやれなかった
『許嫁が居るんだ。
10歳の時に見合いをさせられて、彼女が16になったら結婚しろって... 』
『 中学入試でトップ合格をして、新入生代表に選ばれた。
そのご褒美にって父が用意していたのは...三人の娼婦だった。
俺はその人達に...無理矢理襲われたんだ』