第9章 貴方だけは消えないで
何も考えずに口を突いて出た言葉は
本当に伝えたかったそれとはあまりにもかけ離れたもので
「何の話?
っていうか相葉ちゃん、上履きのまんまだけど...
あぁっ!もしかして二人、デートの約束してた!?」
「はあっ!? 」
「そういう事は前もって言ってくれないと!僕おじゃま虫じゃん!」
先に帰ってるね、カズくん! 仲良くするんだよ?
またね相葉ちゃん!カズくんの事宜しくね!」
「ちょっ、兄貴...!」
颯爽と立ち去るおーちゃんの耳にカズくんの言葉は届いていなくて
デートの約束なんてしてないけど、おーちゃんに気ぃ遣わせちゃったかな
「あの...カズくん、」
俺の呼び掛けにカズくんが振り向く
「...合格、おめでとう」
先ずは1番先に伝えたかった言葉を。
「...どうも」
「...それから、メッセージ無視してごめん。
校内案内も、平野に任せて...カズくんから逃げてて、ごめん」
俺はガバッと腰を直角に曲げて、精一杯の思いを込めてカズくんに頭を下げた